脳科学と心理学から語る子育てのホントのところ

子育て全般について、主に脳科学と心理学の観点から、本当に大切なことをメモ代わりに書き綴っていきます。

抱っことおんぶの奥深い世界

スポンサーリンク

スポンサーリンク

スポンサーリンク

本日は、子育てマメ知識。

マメと言えども侮るなかれな知識。

 

 題して、「抱っことおんぶの違い」。

 

f:id:yuji0605_koi:20180920180600j:plain

タイトルから感じられる雰囲気とは異なり、中身はちょっとマニアック。

かもしれませんが、お付き合いいただければ幸せ也。

 

 

だっこは2人の世界

 

抱っことおんぶ。

 

どっちも子育ての極意5つの実践形の一つとして大変スタンダード。

 

親でなくても、誰もがやってるし、誰もがされてきたことでしょう。

 

でも、この二つの違い。

 

これについて考える人は比較的少ないのでは。

 

まぁ、一部の研究者か、ヒマな人くらいか、、。

 

でもねでもね。

 

コレ知っとくと子育てで色々役立ちます。

 

子どもの発達を伸ばすのにも大変有効な知識。

 

てなわけで。

 

抱っことおんぶの違いでしたね。

 

お腹にいるか、背中にいるかの違いはトーゼン違いますですヨ。

 

とはいえ、コレが大きなヒントでもあります。

 

結論から言うと、

二項関係と三項関係の違い

です。

 

また小難しい、、。

そう見えるかもしれませんが、ご辛抱を。

 

二項関係とは。

 

要は1対1ってことです。

 

2人の関係性。

もしくは、1人と1つの関係性

図で表すと、下のような感じ。

 

二項関係の図

 

どっぷり二者だけの世界。

 

「いないいないばぁ」とか、「にらめっこ」とか、「せっせっせーの(正式名称知らず…)」とかとか。

 

ちなみに、前の記事を読んで下さった方のために、説明を。

 

 

「二項関係」では、モノは何でも良いです。

もちろん、テレビの時にも成り立ちます。

 

前の記事を見てくださった方は混乱するかもしれませんが。

ここの図の矢印と、前の記事の図の矢印は意味が違いますので、ご了承くださいませ。

図が似過ぎてるんで、言い訳兼ねた解説です!

 

前の記事の矢印は、相互反応(あくまでも積極的関わりとして)、意思の交換を表してますので。

対するここの図の矢印は、「注意の向き」や、「なんらかの発信の向き」を含み表してますです。

 

前記事よりも広い意味になります。

 

たとえば、赤ちゃんとテレビの場合。

 

テレビは赤ちゃんに対し意志の交換はしません。

だから、前の記事では矢印は一方向のみとなります。

が、常になんらかの発信をし、赤ちゃんに影響を与えています。

なので、二項関係は成立します。

 

ま、とにかく、前の記事と今回の二項関係とは全く別物ですよ。

ということで。

 

話を戻します。

 

この二項関係というのは、赤ちゃんの“世界の捉え方”といえます。

 

たとえば、二項関係で世の中を捉えている赤ちゃんは、モノを操作している時には、近くに人がいてもそちらに注意が向きません。

 

逆に、

人と関わりあっている時は近くにモノがあってもそちらに注意が向きません。

 

周りに注意がいかず、自分と他者のみの世界。

2者だけの関係で世界を捉えている段階です。

 

そして、発達が進む過程で、二項関係から三項関係へ徐々に移行していきます。

 

それが、生後9か月頃から1歳にかけてと言われています。

 

さて、そこで抱っこです。

 

抱っこは、二人が間近で向き合っていますよね。

 

つまり、二項関係にあるというわけです。

 

親(ヒト)と、子の二者の世界。

 

9か月頃までの赤ちゃんにはまさにピッタリというわけ。

 

それが、抱っこなのであります。

 

おんぶは三項関係

 

f:id:yuji0605_koi:20180920180613j:plain

 

一方、おんぶはというと。

 

抱っことは違い、両者は向き合っていません。

 

なので、同じ方向を見ることができます。

 

ここがポイントでございます!

 

同じ方向を見ることができるということは、同じモノを見ることができるということです。

 

そしてコレが三項関係と関連するワケです。

 

三項関係とは、図で示すとこんな感じです。

 

f:id:yuji0605_koi:20180921172846g:plain

 

上側2つの丸が、おんぶの2人としてください。

 

図のように、おんぶの場合は、2人が同じ人や物を見ることになります。

おんぶの2人以外のモノも含めたコミュニケーションが可能になりますよね。

 

たとえば、

目の前にあるおもちゃを指さして大人と一緒に見るとか、

ボール遊びなんかはまさしく三項関係ですし、

走ってる車を一緒に見たり、

飛んでるチョウチョを目で追ったり、

 

これらは全て三項関係が成立してます。

 

生後9ヶ月あたりからこうした世界が見えてくるようになるようです。

 

それまでは二項関係の世界なわけです。

 

さて、ここまでは、図の中の実線矢印の部分の解説です。

 

これに加えて、点線矢印の部分の理解もできるようになります。

 

前の記事でも少し触れましたので、テレビの例で説明します。

www.musubiyt.com

 

さっきの図をもう一度ご覧ください。

 

左上の丸が赤ちゃん

右上の丸が大人

下の丸がテレビです。

 

赤ちゃんは大人の視線の先にあるテレビを一緒に見る

 

というのは先ほど説明した通りです。

 

これに加えて、

 

テレビを見ている大人を意識する

 

こともできるようになります。

 

そして、その大人を通して、テレビというものを理解することもできるようになる

 

というわけです。

 

 

たとえば、

テレビを観ている大人が笑っているのを見て、テレビって面白いものなんだなと学習する。

とか、

ボールを扱う大人を見て、ボールの特性(はねる、転がる)を理解する

とか。

 

こんな実験があります。

 

赤ちゃんの前に見たことがないおもちゃを置きます。

そのおもちゃを見てお母さんが2つのパターンで反応します。

 

1つは、「笑いながら楽しそうに見る」

2つめは、「こわがる」

 

そうすると、同じおもちゃでも、赤ちゃんの行動が変わります。

前者では喜んで近づき、後者では怖がって近づこうとしなくなります。

 

つまり、お母さんの反応を通して、そのおもちゃがどんなものかを学習しているというわけです。

 

三項関係を子育てに生かす

 

我々の反応を見て、モノの理解をする。

ということは、

周囲の大人の表情や、態度、ことばが大切になります。

 

たとえば、野菜を好きになってほしい場合、まずは大人がおいしそうに、喜んで食べるというのが大切になります。

 

これ、かなり効果ありますよ。年齢が小さければ小さいほど。

 

野菜の栄養素や美味しさをいくら説明しても、言葉での説明なんか足元にも及ばない。

我々大人の行動こそが学習の重要な要素になります。

これは、ことばを持たない赤ちゃんはもちろんですが、言葉を持った以降も同様です。

 

僕たちがなぜゴキブリを嫌いなのか。

ゴキブリは昆虫です。

なのに、カブトムシと扱いが天と地ほど違います。

その嫌いの根源。苦手の根源はどこからくるのか。

僕は、物心つく前からの三項関係による学習からくるものではないかと思います。

 

ゴキブリが出れば、大人がこわがりながら、必死に追いかけまわし、叩く。

一回じゃ死なないから何度も叩く。

動かないのを確認するまで。

そして、汚そうに、触りたくなさそうに何かに包んで捨てる。

 

そういった大人の行動を物心つく前から繰り返し見ている。

そして、ゴキブリは恐怖の対象となるのではないか。

 

そんな壮大な空想をしてみるわけです。。

 

9ヶ月革命とも呼ばれる急激な変化

 

心理学者のトマセロという人は、この時期の爆発的な発達を、「9か月革命」と呼びました。

 

この時期に赤ちゃんは、他者を意図を持った行為者と見なします。

 

つまり、「ヒトには心があるんだ」とわかるようになります。

 

例えば、離乳食を食べさせる時。

「おいしそうだね〜。」と、ママが持つ離乳食。

それを見て、「あーっ」っとご機嫌な感じで指差しする赤ちゃん。

 

この時、三項関係を獲得した赤ちゃんは、

「なんだかママが持ってるモノを見て、楽しそうにしてる。食べたらおいしいのかな。」

「やっぱりおいしい!」

と、ママの意図を汲み取った上で、離乳食を見ることができます。

 

では、二項関係だとどうでしょうか。

同じようにママが離乳食を渡しても、

赤ちゃんにママの意図は汲み取れませんので、

「ママ、楽しそうだな。」

「ん?これ何だろう。食べ物かな。」

と、二つを別々に認知し、結びつきません。

ママに目が行っている時は、ママしか見えず、離乳食に目がいっているときは、離乳食しか見えません。

 

という具合に、三項関係を獲得した赤ちゃんの世界はぐーんと広がります。

 

二項関係は「ボクとヒト(モノ)」の関係。

それに対し、三項関係は、

「他者と何かを共有する」関係になります。

 

逆に言うと、

ある対象を他者と一緒に共有するには、三項関係が成立する必要があるというわけです。

 

三項関係の大きなポイントは、「共有」なのであります。

 

代表的なものとしては、ボール遊びがあります。f:id:yuji0605_koi:20180927182929j:plain
大人が転がしたボールをキャッチして、またそれを大人に返すことが出来る。

これは、大人とボールを共有しないとできないことです。

つまり、三項関係が成立しているということです。

 

三項関係がことばの発達も促す

 

三項関係は、ことばの獲得にも深く関係しています。

それは、

共有するものが「物」ではなく、「言葉」に変わるというわけです。

 

お母さんと赤ちゃんがいて、そこに車のおもちゃが置いてあるとします。

三項関係を獲得した赤ちゃんなら、車のおもちゃをお母さんと共有できます。

 

お母さんが車を指差して

「ブーブー」

と言います。

これを繰り返すことで、車のおもちゃとブーブーという言葉が結びつき、言葉を獲得するということになります。

 

なので、言葉の学習というのは、三項関係が成立していることが重要な要因になるというわけです。


コミュニケーションを育てる上でも、この三項関係の成立は重要になります。

 

三項関係の獲得をチェックする

 

三項関係を獲得しているかどうかは簡単にチェックできます。

 

三項関係のポイントは「共有」と書きました。

 

それは、指差しで確認できます。

 

大人が指さしたその先にある対象。

それを赤ちゃんが目で追えば、共有できている証になります。

 

指差しして、目の動きを確認してみる。

これだけです。

 

ですが、9か月で獲得するというのは、あくまでも平均であり、10か月の子もいれば、11か月の子もいます。8か月の子もいれば、7か月の子もいるかもしれません。

早い子もいれば、遅い子もいる。

早くても遅くても、特に優れているとか劣っているということではありません。

 

ただ、獲得しているかしていないかという確認は大切です。

 

なぜなら、1歳を過ぎても獲得しているか判断できない曖昧な状況の場合、発達障害の疑いがあります。

発達障害は、「早期発見」がその後の発達を大きく左右します。

1歳未満でその傾向が発見できれば、一般的にはかなり早い発見と言えます。

そこから適切な療育やかかわりをすれば、大きく改善できます。

 

少し話がそれました。

 

三項関係へ移行するために

 

二項関係から三項関係への進展は、社会性やコミュニケーションの発達にとって決定的に重要だと言われています。

この進展がないと、

自分と他者の認識が同じであるのか違うのかということにも気づくことができません。

共有するモノと、それに対する相手の反応に同時に注意を払えるからこそ、自分と他者の違いが分かるようになります。

もちろん、そうして初めてコミュニケーションは成り立ちます。

f:id:yuji0605_koi:20180927182921j:plain

物で遊べるようになると、赤ちゃんをひとりで遊ばせる時間が増えがちですが、物だけではなく、大人が入って一緒に遊ぶことが大切です。

これが赤ちゃんのコミュニケーション力が成長するために重要なことになります。

意識的に一緒に遊ぶ時間を設けるようにしてみましょう。

また、同年代かそれ以上のお子さんがいる場所へ連れ出して一緒に遊ばせるのもとても良いことです。

 

遊びといっても、ごく簡単なかかわりで十分です。

たとえば、

おもちゃを「ちょうだい」と言って、手を差し出す。

逆に、「どうぞ」と言って、おもちゃを差し出す。

これだけで、赤ちゃんにとっては遊びになりますし、おもちゃを共有することになりますので、三項関係も成立しています。

また、

シャボン玉を吹いて見せるだけでも三項関係が成立しています。

シャボン玉を一緒に見て、喜び合う。

これも「共有」です。

そして、赤ちゃんも楽しいので、遊びとしても成立しています。

 

まとめ

 

抱っこは二項関係、おんぶは三項関係。

そんな赤ちゃんの世界を想像しつつ、抱っこやおんぶをしてみてはいかがでしょうか。

この話から、赤ちゃんを見る視点が一つ増えれば、きっと赤ちゃんとのかかわりがまた楽しくなるのではないでしょうか。

そうなれば嬉しい限りです・・。

 

本日も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
よろしければ下のボタンぽちっとお願いします。皆様のぽちっが大変励みになります。